九州の4火山(開聞岳・九重山・猿葉山・雲仙岳)岩石のゼータ電位測定
○長谷英彰(京大)・石戸経士(産総研)・橋本武志(北大)・神田径(京大)・田中良和(京大)
ゼータ電位は一般的に固-液界面に発生する分極の強さを表し、流動電位を規定する重要な要素のひとつである。近年、多くの火山で測定された自然電位(SP)異常は、このゼータ電位が負である仮定の下で流動電位によって形成されたものであると解釈するのが通例であった。しかし最近の研究で阿蘇山に正のゼータ電位を示す岩石が数多く存在することがわかり、特にその傾向が顕著である高岳周辺では、SPデータに正のゼータ電位による"逆地形効果"が存在することが明らかとなった(Hase et al. [submitted])。このように実際の火山のフィールドで正のゼータ電位が発見され、SPデータに影響を与えているケースはこれまでに報告例がなく、この現象が特異的な現象なのか、それとも普遍的に存在するが確認されていなかった現象なのか定かではなかった。そこで本研究ではこの問題を解明する為に、既にSP測定が行われている九州の4つの火山(開聞岳・九重山・猿葉山・雲仙岳)の岩石について岩石のゼータ電位測定を行い、SPデータとの比較を行った。その結果、九重山の大半(10 of 12)と猿葉山と雲仙岳の一部のサンプルで正のゼータ電位が確認された。また地熱兆候がみられない地域のSPの高電位異常と正のゼータ電位を示すサンプルの存在する地域が一致するケースがみられ、阿蘇山の高岳周辺で見られた"逆地形効果"が数多くの火山でみられる可能性を示した。