三宅島の岩石のゼータ電位測定-傾斜ステップに伴う自然電位変動の定量化に向けてー
○桑野 修・吉田 真吾・上嶋 誠・小河 勉・中井 俊一(東大地震研)・佐藤 秀幸(産総研)
三宅島2000年活動において傾斜ステップ時の長周期地震波形に相似した自然電位変動が捉えられた(笹井他 2001)。この自然電位変動の発生メカニズムとして傾斜ステップに対応して水が周囲に押し出されることによる流動電位の発生が指摘されている。観測された自然電位変動の定量的解釈には、流動電位を規定する要素のひとつであるゼータ電位を知る必要がある。そこで実際に三宅島で採取した岩石試料(sample ID: M83,M62)を用いてゼータ電位の測定を行った。また比較のため神津島で採取した岩石(sample ID:KZ)についても測定した。三宅島の試料(M83,M62)では、pH2付近にゼータ電位が0になる点(等電位点)があり、それより大きいpHではゼータ電位の符号はマイナスで、pHが大きくなるほどゼータ電位の絶対値も大きくなることが分かった。未調整時のpHとゼータ電位(ζ)はM83がpH6.2で約-20mV、M62がpH5.9でζ=-10mVとなった。一方、神津島の試料(KZ)ではpH2~6の間でゼータ電位の値はほぼ一定で約-22mVを示し、ゼータ電位が0になるような点はみられなかった。pH調整直後と20~30時間後の測定ではpHが変化していないのにゼータ電位の値が大きく変化するものもあった。