諏訪之瀬島2000年12月の火山活動について
2000年12月24日の諏訪之瀬島御岳の火口調査について(速報)
12月24日午前、井口助教授、味喜助手が鹿児島県防災ヘリコプター「さつま」に搭乗、対地高度約500mから赤外線熱映像測定による火口周辺の温度調査を実施しました。
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新たな火孔二つは、御岳火口1の北東、火口縁から30〜50m(火孔2)、および約200m(火孔3)の地点にある(図参照)。
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新火孔の大きさは、火孔2が直径20〜30m、火孔3は約10mと推定されます(北東方向からの全体図,火孔2,火孔3)。
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御岳火口、新火孔の最高温度(速報値)は以下の通り:
御岳火口1:約450℃(白煙放出中)
火孔2:約100℃(火山灰を含む噴煙放出中)
火孔3:約270℃(少量の火山灰を含む火山ガス噴出中)
* 噴気や噴煙を通しての測定であるため、実際の火口の温度より低めになっている。御岳火口および新火孔直下の浅い場所まで、マグマ・溶岩が上昇していることを示唆している。なお、他の場所(噴気地帯等)にも、温度異常が認められたが、50℃未満であった。
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火山活動が活発化していることには違いない。しかし、今回の調査結果でも、大規模な爆発につながる徴候は認められない。今後も調査を継続し、ふたつの火孔の拡大や噴火活動の推移を見守る必要がある。
十島村は、12月19日設置した諏訪之瀬島火山活動警戒本部(職員の常時当直体制)を22日に廃止・解散しました。なお、非常連絡体制、火口から半径2km以内立入禁止措置および3km以内は噴石に注意の措置は継続しています。
12月19日、午後5時に、諏訪之瀬島から「諏訪之瀬島御岳火口の北東側から噴煙が上がっている」という連絡がありました。12月20日午前、石原教授が鹿児島県の防災ヘリコプター「さつま」に乗り、諏訪之瀬島の火口周辺の状況を観察しました。写真も撮影しましたが、天候が悪かったため、公開できるような画質ではありません。以下は、火山活動研究センターで観測している結果や、12月21日の報道映像をもとにした12月22日現在の見解です。
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地震活動:
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地下1kmより深い火山性の微小地震(無感)の回数は、昨年秋からやや増加(月3〜10回)。
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地下1kmより浅い火山性の微小地震や火山性微動の発生回数は、今年はじめからやや増加(それぞれ、月に20〜50回、および50〜300回程度)。
解釈:地下からマグマが順次あがってきている。今後、噴火活動がたかまる傾向にあると判断される。ただし、1992〜1993年頃の活動期に比べて活発ではない。
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地殻変動:
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諏訪之瀬島のGPSと中之島のGPS観測室の間の距離は、約7年間で僅かに(1cm)伸びている。
解釈:1点の観測なので断定はできないが、御岳火口直下にマグマ・溶岩が溜り、極く僅かながら、島が膨張。今後、噴火活動が活発化する可能性(1992〜1993年程度)は十分にあるが、大噴火発生の徴候とはいえない。
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今回の火口の位置:
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御岳火口は、火口を取り囲み直径約400mのリング状の噴出物の丘があります。21日の映像で見ますと、この丘の外側、東ないし北東の斜面(A)とその麓(B:火口中心から400〜500m)の2ヶ所に噴気孔(直径数m程度)ができています。
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Aからは、噴煙(火山灰を含む)が出ていて、Bからは温度の高い火山ガスが噴出しているように見えます。
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これらは、以前から、蒸気を出していた、あるいは、噴火していた噴気孔であった可能性があります。諏訪之瀬島の2万5千分の1の地形図をみると、Aの位置に相当するところに、窪み(噴気孔跡?)があります。
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今後の活動について:
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過去約40年間、盛衰を繰り返しながら活動を続けてきた諏訪之瀬島の活動の高まりのひとつと考えています。
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大学では、常時データを見ることはできませんが、状況に応じて調査を行います。今回、鹿児島地方気象台は12月20日午後4時に臨時火山情報を出しました。近日中に、気象庁は鹿児島県の協力を得て地震計を設置し、24時間体制で監視する予定です。
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これまでに爆発による火山弾が火口から2km近く、まれに、登山口付近(火口から約3km)に落下したことがあります。この程度の爆発の可能性はあるものの、学校や集落のあるところまで、火山弾が飛んでくる可能性は極めて低いと思われます(火口から2km以内は立入禁止,3km以内は注意喚起)。
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しかし、大きさ5cm以下の石は噴煙が高く北風が強い場合、風に運ばれて集落に落下する可能性はあります。桜島では、今年10月7日の爆発で火口から約5kmの桜島港付近に1〜3cmの小石が落下し、車のガラスやビニールハウスのカバーが壊れる被害がありました。桜島の小中学生は,登下校時にヘルメットを使っています。風下にあたる時、爆発の噴煙が高く上がった時は、建物の軒先に逃げ込み様子をみる、といった注意が必要です。
参考資料
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鹿児島県地域防災計画(火山災害対策編,平成11年3月)