桜島火山観測所での井口教授の記者会見まとめ

桜島火山観測所での井口教授の記者会見まとめ

8月22日 16:00‐17:00

今日の記者会見の内容は、基本的には、昨日開催された火山噴火予知連絡会拡大幹事会後の発表の基づいたものである。主なポイントは次のとおり。

8月15日以降の活動は、南岳直下にマグマがダイク状に深さ数kmのところまで貫入したことが原因である。今回のダイクの貫入そのものは、これまでの南岳や昭和火口の噴火系とは異なるもので、貫入が有ったことで直接的に大きな規模の噴火には直ちにはつながらないものの、この貫入により桜島が東西に引き裂かれるような状況に置かれたことになり、深部からマグマが上昇しやすい状況が一歩進んだとも言え、桜島の大正噴火級の大噴火に至るステップを1つ上がったことになると考えられる。

 

8月23日 16:00‐16:25

1968年5月29日から始まった過去の活動状況と今回の8月15日のダイク貫入イベント前後の活動状況を比較ながら、今後の桜島の噴火活動の推移に関しての可能性に関して解説した。

今回のほうがA-typeの地震活動が急速に低下しているが、1968年5月の場合も同様な地震活動の低下が見られ、そのパターンはよく似ている。1968年の地震活動の場合には、5月29日以降一時的な増加をへた後に活動が低下し、爆発的噴火活動も1年以上の間、低下した状態が継続した。しかし、1972年10月に入ると再び爆発的噴火活動が活発化し、この活動が長く継続した。したがって、過去の例を基に考えると、現在、噴火活動が低調ではあるが、昭和火口での噴火活動が今後活発化することは十分考えられ、少し長い時間軸に立った観点から注意する必要がある。また、8月15日以後、緊急実施した水準測量の結果を見ると、姶良カルデラに源をもつ従来の膨張源と今回のダイク貫入による変動が合わさった変動になっており、姶良カルデラ直下からのマグマ供給は依然としてあり、桜島大正噴火級の大規模噴火が近い将来に発生することを考えておかなければならない。